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原子力空母の横須賀配備に関する申し入れ
2006年8月11日

神奈川県知事
 松沢成文 様
日本共産党県会議員団
団長 河野幸司



 原子力空母の横須賀配備をめぐって極めて重要な局面となっています。松沢知事は、6月定例会本会議での原子力空母の横須賀配備に関連した質問に対して、「現在、その回答内容などについて検討を進めると共に、広域自治体の立場から横須賀市周辺の市町や空母艦載機の本拠地である厚木基地関係市の意向を把握することも必要と考え、適時情報提供するとともにお考えを伺っているところです」「今後、関係市町の考えもふまえ、県として対応を総合的に検討してまいります」と答弁しています。そして、県は6月13日から16日、6月30日から7月11日の2回、関係市町への説明と意見聴取を行い、7月14日、外務大臣、防衛庁長官、防衛施設庁長官に4項目についての要望書を提出しました。これに対して、政府は8月4日に外務省北米局長による回答をしましたが、県は8月7日、8日に関係市町に対する3度目の説明と意見聴取を行っています。原子力空母の横須賀配備問題は、原子炉事故などを考えれば横須賀市だけの問題ではなく、広域に係わる重要な問題であり、空母艦載機の爆音被害を受けている厚木基地周辺住民の問題でもあります。
 日本共産党南関東事務所(大森猛所長)と日本共産党神奈川県委員会(小池潔委員長)は、7月21日、麻生太郎外務大臣に原子力空母の安全性についての質問書を提出したところですが、日本共産党県議団として、県が原子力空母の配備について、次の項目での対応をするよう申し入れを行うものです。

1.ファクトシートなどによる米国政府や日本政府の説明では、原子力空母の安全性が確認できるものとはなっていないし、市民団体などの問題提起や県民の疑問に応えるものとなっていない。また、原子力空母の横須賀配備は基地の強化と恒久化につながり県是である基地の整理・縮小・返還にも反するものであり、県として反対を貫くこと。
2.6月13日以降、県は3度にわたって関係市町の意見の聴取をされていますが、関係市町への意見聴取は、何時、誰が、誰に対して、どのような質問をしたのか、また、どのような回答だったのかを明らかにすること。
3.松沢知事の外務大臣、防衛庁長官、防衛施設庁長官に対する4項目の要望書の回答に係わって、次の項目での回答を政府に求めること。
@ 「原子力空母の配備の必要性、安全性について、総理大臣自らが市民、県民に説明するなど、政府による説明責任を果たすこと」を求めましたが、政府は既に説明しているとの回答で、総理大臣自らの説明責任も果たそうとしていません。県として再度、総理大臣が説明するなど説明責任を果たすよう求めること
A 8月4日の回答では、中央防災会議主事会議申合せの原子力艦の原子力災害対策マニュアルに基づき、原子力空母の応急対応範囲として屋内退避範囲を半径1kmから3kmとしています。しかし、回答においても「応急範囲は軍事機密の制約の下で、原子力軍艦の技術情報が必ずしも明確でない中で」とされており、軍事機密の制約がある状況の中で、屋内退避範囲を1kmから3kmとすることは妥当とは言えないのではないか。また、ファクトシートでは、「基地内にとどまる」としているが、中央防災会議主事申合せとファクトシートとの相違がなぜ生じるのかを明確にすること。
B 政府や地方自治体の日本の環境法令等に基づく立ち入り検査については「適切に対処する」との回答になっており、国と地方自治体の立ち入りを認めるものとなっていない。あらためて立ち入りを求めること。

4.ファクトシートとファクトシートへの質問に対する外務省北米局長の回答(以下『回答』)に関連して次の項目について、政府に対し再質問をして回答を求めると共に、県としての考え方を示すこと。
@ 『回答』−1では、「ファクトシートについて、内閣府、文部科学省等の関係省庁間で共有し、検討を行ってきたところである」「その上で、本件ファクトシートは米原子力艦船の構造や運用、安全措置等について従来よりも広範かつ詳細な情報を提供するものであり、安全性を再確認するものであり、原子力空母を含む米国の原子力軍艦の我が国寄港時の安全性は確保されている」としています。この件に対して、7月21日の日本共産党南関東ブロック事務所などの外務大臣への申し入れの際、外務省は、「内閣府の原子力安全委員会事務局にファクトシートを提供し了承された。1964年に原子力安全委員会に諮問したので、あらためて原子力安全委員会に諮問する必要はない」と回答しています。しかし、1964年の諮問は原子力潜水艦の寄港に関連してのもので、しかも十分な調査がなされたものではない。この対応では極めて不十分であり、あらためて原子力空母の安全性については、原子力安全委員会に諮問すべきである。

A 『回答』2−(1)では、「米国の原子力軍艦について、人体や環境に悪影響を与えるような放射能の放出を起こした事例は皆無であると承知している」としています。しかし、これまでに明らかになった事例として以下の事故があるが、調査し、事故の内容を明らかにすること。
  1975年 潜水母艦プロチウスがグアムで高い放射能をもった大量の一次冷却水を放出し、周囲の海水を汚染した。
1978年 ピュージェットサウンド海軍造船所で作業員が誤ってバルブを開き、高い放射能をもった500ガロンの一次冷却水が流出。1ケ月の汚染除去作業を行なった。
1979年 原子力空母ニミッツが原子炉部分で一次冷却水漏れ。
1980年 原子力巡洋艦ロングビーチが沖縄で高放射能検出。
1981年 原潜サム・ヒューストンがピュージエット造船所で冷却水漏れ、1人が汚染
1982年 原潜サーゴが冷却水排出時に放射能漏れ。
1989年 原子力空母リンカーンが330ガロンの放射能冷却水を川に放出。
1991年 原子力巡洋艦ロングビーチがバルブ弁故障のため、サンディエゴ湾内に一次
冷却水が漏れる。
  1992年 ニューポートニューズ造船所で、原子力空母エンタープライズのバルブ作業員が誤って溶接し、放射能を帯びた一次冷却水が漏れて、作業員9名と4つの隔室が汚染され、600万ドルの汚染作業費を要した。
  1995年 原子力巡洋艦カリフォルニアで放射能を帯びた水が漏れ、3名の水兵が汚染。1名の水兵が原子炉室の機器のテスト中の事故で火傷。
  1996年 ピュージェットサウンド造船所で原子力艦アーカンサンスから放射能性蒸気が漏れたが、米海軍は15時間事故を州政府と市民に通報せず。
1997年 原潜ポーマツが基地での作業中に2人の労働者が被爆。
2000年 原潜オリンピアがハワイの造船所で修理中に放射性冷却水が漏れ3名が被爆。

B 『回答』−2−(1)では、「米原子力艦船の日本寄港は1,250回を越えるが、日米両政府がそれぞれ実施しているモニタリングにおいて、米原子力軍艦を原因とする放射能の異常値が検出されたことは一度もない」としています。しかし、1968年の佐世保港での原子力潜水艦ソードフィッシュ号の異常放射能事件、1972年の沖縄那覇港でのコバルト60の異常検出、1996年11月15日午前、横須賀基地での2隻の原子力潜水艦寄港中の通常の3倍の放射能の計測など異常な事態がおきています。これらの事故について明らかにすること。
C 『回答』−2−(2)では、1999年のサンディエゴでのステニスの事故について、「冷却機能は一瞬たりとも失われていない。緊急停止の45分後に速やかに再稼働された。地元自治体に海軍から迅速な連絡があった」としています。しかし、情報公開されたステニスの艦長の事故原因調査の陳述書では「タクボートで曳航中、2基の原子炉を稼働させたが、復水器の泥のため結局手動で停止させた」とあり、明らかに原子炉の冷却機構の喪失があったことが示されています。そして、米海軍からは、このことは直ちに明らかにされず、事故の内容が明らかになったのは、市民団体による情報公開法に基づくことによってでした。この情報公開によって海軍の11月30日の声明文書が公開されたが、この声明は11月30日に公開された形跡はない。公開されていれば、地元紙であるサンデイエゴ・ユニオン・トリビューンの12月2日付けの報道は「空母は5分間動力を失った」との誤った報道はしていないはずです。
D 『回答』−2−3「米海軍においては、原子炉に関するトラブルについては、極めて些細なものも含め、然るべく報告されるとともに、地元地方自治体等にも必要に応じて速やかに連絡されている」また、「空母ステニスの事例に対しては、横須賀市議会副議長等の一行に対して、海軍より迅速な連絡旨説明があった」としています。しかし、このことは上記でもふれたように、空母ステニスの事故の時は、直ちに連絡されていません。また、「必要に応じて」としていることは、米海軍が無条件で情報を提供する事ではないことを示しています。米海軍(海軍省海軍作戦長官室)は1981年4月3日に「原子力事故および放射能事故に対応するマニュアル」、このマニュアルは「特別扱いを要す−外国人への公開不可」とされています。そして、公的情報の目的は「一般行政機関に対して通達を行う目的は、事故による放射能の危険を行政機関に知らせ、市民のための保護を勧告することにある」「マスコミへの情報発表の目的は、市民に対して事故の正確な説明を行い、無用の不安を防ぐこと。」とし、情報の制限として「市民の安全を確保する、もしくは危険の可能性への不当な恐怖心によるパニックを防止するために必要な場合以外は、機密情報を一般に公開してはならない。公開する内容は市民の安全のために必要な事項に限られる」とし、全ての情報公開をする立場にはなっていません。
E 『回答』−2−(4)では、「国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル1以上に相当する事例はなかったのか」について「軍事用の原子力施設への適用はしない」としているが、軍事用原子力施設でも、評価尺度での対応が求められるのではないか。
F 『回答』−3−(1)では、合衆国の港における活動について適用される安全性に係わる予防措置について質問しているのに、「米原子力艦船の日本への寄港に際して実施を保障している安全装置は基本的に米国の港においても実施している」としているが、回答にはなっていないのではないか。
G 『回答』−5−(1)では、「米原子力軍艦の燃料の素材は固体金属である」「加圧水型の原子力発電で用いられているセラミックの燃料とは異なる」との回答だが、固体金属とは何か。ジルカロイ合金(ジルコニウム合金)を使用→冷却水漏れや異常核反応等によって1,000度を超えると、水蒸気と反応して水素ガスを発生させ、同時に反応熱をだし、1,900度を超えると溶け始めるし、水素ガスの大爆発を起こす危険があるとされている。
H 『回答』−6−(1)、「原子力規制委員会及び原子炉安全諮問委員会が政府や海軍から完全に独立した委員会か、構成員はどうなっているのか」に対する回答は、「独立した機関である。両委員会は、大統領が指名し、議会が承認する5名のコミッショナーで構成される委員会のもとに事務局と執行機関がおかれ、更に専門の諮問機関が置かれている」となっている。大統領が指名する委員では独立した委員会とは言えないのではないか。
I 『回答』−6−(3)では、「原子力規制委員会や原子炉安全諮問委員会が行なった米海軍に関する審査については、軍艦の構造の詳細に関するものであり、基本的に非公開である」としています。このことは軍艦の構造の設計だけを審査しているだけに過ぎず、また、審査結果が公表されていないのでだは安全性が担保されたと言いない。
J 『回答』−8−(1)「ごく日常的な原子炉に係わるメンテナンス作業は行なわれてきたと理解している」「米側より蒸気系等や電気系統などのメンテナンスであると説明されている」メンテナンスの内容はどういうものか。また、メンテナンスのための新たな施設をつくることはないのか。
K 『回答』−8−(2)「米側よりメンテナンス作業によって人体や環境に悪影響が及ぶ可能性は全くないとの説明を受けている」とのことだが、実際には起きているのではないか。
L 『回答』−11−(2)「そのような事故が起こった場合でも、多重の防壁等のため、放射能が艦外に放出することは、更に、極めて想定しがたい旨述べられていると理解している」とされています。しかし、米海軍(海軍省海軍作戦長官室)は1981年4月3日に「原子力事故および放射能事故に対応するマニュアル」を作成、「海軍作戦長官(CNO)は、原子炉または放射能事故によって起こりえる事態を懸念している」「海軍は、万が一原子炉事故または放射能事故が起きた際、事故の影響を受けた地域および職員を管理、監視し、汚染除去のための適切な対策処置を行えるような態勢を整えておかねばならない」として原子炉事故が起こり、放射能事故があり得ることを想定しての対応がされています。このマニュアルの中で、対象として原子炉事故および放射能事故をあげまた、定義として、「原子炉事故 原子炉が臨界に達して抑制不可能になり、炉心に損害が生じる状態、あるいは冷却液の損失などにより核分裂による生成物が炉心から著しく放出される事態。」「放射能事故 放射能もしくは放射能物質の抑制がきかなくなり、人命、健康、土地に対して危険を生じる事態、または一般市民が許容量を超えた電離放射線にさらされた事態」「国内緊急事態 アメリカの国内、領地、所有地において一般市民に被害または緊急事態が生じ、それにより公共の福祉が冒され、通常の行政に混乱をきたす状態」としています。このマニュアルでは、米海軍が原子炉事故、放射能事故が起こりえることを想定しており、『回答』と相違がある。
M 『回答』−12−(1)では、 「艦船から想定される量の放射能が放出された場合のあり得る最大の影響はあくまで局地的」との事だが屋内待避、避難等が必要な具体的影響の範囲について確認したい」との質問に、「屋内避難等の何らかの防護対策が必要となる範囲は、極めて慎重な分析の結果、在日米海軍基地内に十分に止まる範囲内と限定されている」としているが、「極めて慎重な分析の結果とは」何か。「基地内に被害はとどまる」としているがその根拠はなにかを明らかにすること。
N 『回答』−12−(1)では、 「艦船から想定される量の放射能が放出された場合の
あり得る最大の影響はあくまで局地的」との事だが原子炉の安全性に関する第一人者であるゴードン・R・トンプソン教授(米国資源安全保障研究所所長)のレポート「日本の横須賀の原子力空母による放射能事故の危険性」によれば、「原子力空母の原子炉で炉心損傷事故が起きた場合、格納容器が隙間の空間が少ないコンパクトな設計になっていること、原子力空母の原子炉炉心は、比較的多くのジルコニウムを含んでおり、そのために格納容器内で水素爆発が起きやすいこと、また炉心は高濃度のウラニウムを含んでいること等から燃料の溶融によりウラニウムが超臨界状態になる可能性があり、格納容器により多くの負担をかける核分裂反応の暴走を起こしやすく、その場合、炉心損傷事故に続いて格納容器が損傷して、環境中に放射能物質の放出を招く危険がある」としている。このレポートについて検証すること。
O 『回答』−14「原子力軍艦の原子炉については、その構造上、核爆発が起きることは不可能」とのことだが、237濃縮ウランは97%であり、反応の暴走の危険性、燃料の危険性はないのか。また、トンプソン教授の指摘のような格納容器内での水素爆発が起きる可能性があるのではないか。
P 『回答』−16 チェルノブイリ事故は「運転員が考えられないような複数の重大な運転規制違反行為を立て続けにおかした」、スリーマイル事故について「いくつかの故障が重なり、運転手の誤操作もあり、炉心の一部が適切に冷却されずに損傷した」とし、原子力艦船は安全対策に万全を期す努力を不断に行なっており」とし、人為的なミスがないことを前提にしているが、原子力発電所も原子力艦船も人為的なミスが起きるのは同じと見るべきであり、原子力軍艦を特別扱いにするのは間違っているのではないか。また、軍艦である原子力空母の場合には、原子力発電所の場合にない、戦闘による攻撃の危険、テロの危険、空母ステニスに起きた座礁などの危険などが加わる事となるが、この危険をどう考えるのか。
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