| 2004年2月定例会
定県第138号議案「損害賠償請求訴訟の判決に対する控訴について」
かわの幸司議員の質疑
(2004年3月9日本会議)
かわの県議
ただいま提案されました、損害賠償請求訴訟の判決に対する控訴・定県第138号議案について日本共産党県会議員団を代表して質疑を行ないます。
今度の訴訟では、原告は、第1に、小田原警察署が原告に対する取り調べを行なった際、原告の主治医の指示を無視して長時間の違法な取り調べを行なったこと。第2に、取り調べによるストレスで腸閉塞を発症したこと。第3に、腸閉塞で苦しんでいるのに腕に手錠をかけたとして、被告である神奈川県に対して、国家賠償法第1条第1項に基づき、206万6,870円の損害賠償を求めたものです。裁判所の判断は、第2と第3の訴えについては、原告の訴えをしりぞけ、第1の長時間の取り調べに対して、違法とし、被告である県に30万円の支払いを求めたものです。これに対して、県は、事実誤認として、控訴するために、議会に承認を求めているものです。この訴訟の原告は、革労協の活動家とされ、逮捕される前は、内ゲバによって重傷を負い、入院をしていた人物です。私たち日本共産党は、凶器などを使って内ゲバまで行なうこうした団体を厳しく批判してきたことは言うまでもありません。しかし、今度の訴訟は、警察の取り調べのあり方が問われているもので、取り調べのあり方が、正当だったのかどうか、この立場から議会としても判断していくことが必要だと考えています。
そこで、控訴を最終決定した松沢知事に伺います。
第1に、先ほどの説明では、裁判官の判断に事実誤認があるとのことですが、何が、どのように事実誤認なのか、知事の詳細な説明を願います。
第2に、警察官は、逮捕・勾留中の被疑者の取り調べに当たっては、被疑者の身体状況等を考慮して、被疑者の生命・身体に対して、不相当な負担や苦痛を与えないよう措置をすることが職務上の法的義務を負っていると考えるが、知事の見解を伺います。
第3に、被疑者が病気などの場合は、主治医である医師の判断内容を基準にして取り調べの可否、取り調べの時間などを判断すべきであると考えるが、知事の見解を伺います。
第4に、原告は、2000年2月9日、刃物などの凶器でおそわれ、生命の危険が及ぶほどの刺し傷を受け、5時間にわたる緊急手術の後、生死の境をさまよった末、2ヶ月近く寝たきりの状態で治療を受け、4月21日に退院することとなりました。この退院直後に原告は、逮捕されましたが、退院の時点で、肺の機能や体力は極端に衰え、退院後も引き続き、通院が必要とされ、半年程度は、安静な療養生活を送ることが必要であったと、手術とその後の治療を行なった中川医師は、証言しています。知事は、このような状態にある原告が、長時間にわたる取り調べに耐えられる健康状態であったと考えているのか。見解を伺います。
第5に、中川医師は、原告が逮捕された直後、取り調べの可否に対する高橋警部補らの質問に対して、原告が本来安静な療養生活を送るべきであり、長時間の取り調べは、無理であり、退院直前に原告に対して1時間の面会時間を許していたことを考慮に入れ、1時間程度の取り調べが、限度であると述べています。しかし、原告は、4月21日の退院直後に逮捕され、22日以降、取り調べを拒否した23日以外は、連日取り調べを受けています。そして、時間は、4月22日、2回3時間30分、24日、2回3時間11分、25日、2回3時間48分、26日、3回5時間25分、27日、3回3時間42分と、中川医師の判断を超える時間となっています。そして27日の取り調べの後、腹痛を起こし、嘔吐し病院で診断の結果、腸閉塞と判断され、即入院となりました。取り調べの時間は、5日間で19時間36分、1日あたりの平均は3時間55分に及ぶもので、これは、医者の判断を無視した違法な取り調べだと考えますが、知事の見解を伺います。
以上で第1回目の質疑を終わります。
松沢知事
ただいまの質疑につきましては、刑事訴訟法に基づく捜査手続きに関する事柄でございますので、県警本部から答弁をいたします。
末綱県警本部長
事件の概要等について、まず説明から始めさせていただきたいと思います。少し長くなるかも知れませんけれども、できるだけ詳しくお話をさせていただければと思っております。順不同になるかも知れませんが、ご質問のあったことについては、すべてお答えさせていただきたいと思っております。
まず最初に、提案をいたしました今回の損害賠償請求訴訟でありますが、これは平成12年4月21日に県警の小田原警察署が凶器準備集合罪、銃砲刀剣類所持等取締法違反で通常逮捕しました革労協主流派の非公然活動家であります原告が逮捕・拘留中の違法な取り調べにより耐えがたい肉体的、精神的苦痛を受け、そのストレスにより腸閉塞を発症したなどとして、神奈川県に対して損害賠償の請求を求め、提訴したものであります。
裁判の審理経過でありますが、平成14年7月23日、横浜地裁に提訴を受け、同年9月16日の第1回口頭弁論を皮切りに9回の口頭弁論がおこなわれました。本年2月26日に判決の言い渡しがありました。
本件訴訟における原告側の主張でありますけれども、3点ありまして、1点が取り調べ時間は1時間が限度という主治医の指示を無視した長時間の違法な取り調べにより、耐えがたい肉体的、精神的苦痛を受けた。2点目が違法な取り調べによるストレスにより腸閉塞を発症し、生命の危険にさらされた。3点目が腸閉塞を発症した後、入院先の病室で手錠をかけられ、肉体的、精神的な虐待を加えられたという3点でありました。
判決では、2点目の原告に対する取り調べと腸閉塞発症の因果関係につきましては、腸閉塞発症のときまでそれを伺わせるような症状は全くなく、本件取り調べと原告の腸閉塞発症との間に相当因果関係があったと認めることはできないとしております。
また3点目の原告に対し手錠を私用した措置につきましても、監獄法の規定により適法であると認定されておりまして、いずれも当方の主張が認められましたが、1点目の原告に対する取り調べに関しましては、一部違法な点があるとして30万円の支払いを命じられたものであります。
具体的には、本件取り調べにおいては、1日平均4時間の取り調べがおこなわれております。これは取り調べ時間の限度が1時間であるとする主治医の判断内容を逸脱するもので、違法な取り調べであるとの認定でありました。
しかしながら、原告を逮捕した直後、複数の捜査員が主治医から取り調べの可否について事情聴取をした際、主治医からは体力を消耗するような極端に激しいものでなければ、3、4時間の取り調べは可能であること、治療のため最低3日に一度、周二度の割合で石による消毒が必要であるとの説明を受けております。
そして、これを受けまして、捜査員は原告が腸閉塞により再入院するまでの6日間中に5日間取り調べをおこないましたが、それぞれの取り調べ時間は平均すると約4時間にとどめるとともに、その間、4回通院をさせておりまして、しかも腸閉塞を発症する2時間前にも主治医の診察を受けさせるなど、原告の体調管理には十分配慮しながら取り調べをおこなっております。
以上の各事情に照らしますと、主治医が判断した取り調べ時間の限度が1時間であったとする裁判所の認定は事実を誤認していることが明らかであること、また、その取り調べそのものも原告の体調に配慮し、6日間のうち4回通院させる等の措置をとるなど、適正におこなわれており、何ら違法な点は認められないことから、控訴をするものであります。
次に、事実誤認の点についてでありますけれども、原判決は平成12年4月21日に主治医が捜査員の事情聴取に対して述べた医師に判断は、取り調べ時間の限度は1時間程度であったと認定いたしましたが、この事実認定が誤認をしているという部分であります。
原告を逮捕した平成12年4月21日に、捜査員が主治医から取り調べの可否について事情聴取をしましたが、その内容は内蔵の機能障害はなく、日常生活を営むに支障がないことから、体力を消耗するような極端に激しいものでなければ、3、4時間の取り調べは可能である。胸の傷の治療のため、最低3日に一度、週二度の割合で医師による消毒が必要であるというものでありました。このことは主治医と面会した捜査員の記憶、及び当時作成された報告書の内容からして明らかであります。
次に、原告は長時間の取り調べに耐え得る身体ではなかったのではないかという質問でありますけれども、原告は平成12年2月9日に、いわゆる内ゲバ事件により負傷しました。逮捕される同年4月21日までの約2カ月近く入院をしていたわけであります。その間、捜査員は原告の健康状態につきまして、必要かつ可能な範囲で調査をしております。
具体的に申し上げますと、逮捕される10日前の4月10日には、主治医から抜糸さえ済めば、いつでも退院できる状態であるとの供述を得ていることや、翌4月11日から通常食を摂取していることや、階段等を自力で歩行するなど、日常生活を営むに支障がないほどに体力が回復していることを捜査員が確認をしております。
そして、原告を逮捕した当日におこなった主治医に対する事情聴取の際、同主治医が先ほどいいました内蔵の機能障害はなく、日常生活を営むに支障がないことから、体力を消耗するような極端に厳しいものでなければ、3、4時間の取り調べは可能であるとの説明を受けておりまして、以上の各事情から、原告は退院時、警察の取り調べに十分耐え得るまでの健康状態であったと判断したものであります。
次に、3、4時間の取り調べというのが、医師の判断を無視したものというものでありますけれども、原告のように逮捕前に約2カ月──ちょっと経緯を話をさせていただきますと、入院を2カ月ぐらいして逮捕したのが4月であります。そして、その後、また再入院をしておりまして、その後、処分保留で最終的には起訴猶予になっているんですけれども、その後、また13年にこの原告は福岡で、こんどは凶器準備集合──革労協の主流派ですけれども、逆の反主流派を襲うために準備をしていたもので、実は指名手配をされておりまして、いまだに指名手配のままで身柄確保できていない。ですから、今回、9回公判をやっているんですけれども、一度もその本人原告は出てきていない状態であります。
原告のように、逮捕前に約2カ月という長期にわたる入院をしていた被疑者の取り調べに当たっては、その取り調べに耐え得る健康状態であるか否かについては、医師等の判断を尊重しなければならないことは申すまでもありません。本件の場合も主治医の判断は内蔵の機能障害はなく、日常生活を営むに支障がないことから、体力を消耗するような極端に厳しいものでなければ、3、4時間の取り調べは「可能であるというもので、胸の傷の治療のため、最低3日に一度、週二度の割合で医師による消毒が必要であるというものでありました。
これを受けて、捜査員は原告が4月27日に腸閉塞により再入院するまでの6日間、週に5日間の取り調べをおこないましたが、それぞれの取り調べ時間は1日平均すると約4時間でした。また、その間、4回通院をさせておりまして、しかも腸閉塞を発症する2時間前にも主治医の診察を受けさせるなど、原告の体調管理には十分配意しながら取り調べをおこなったものであります。
最後に、取り調べの方法が逸脱しているのではないかということでありますけれども、今まで縷々申し上げてきましたように、原告の逮捕時における判断内容は、体力を消耗するような極端に厳しいものでなければ、3、4時間の取り調べは可能であるというものでありました。捜査員は5回おこなわれた原告に対する取り調べは、主治医の判断内容を考慮して、ほぼ4時間以内でおこなわれました。確かに4月26日は、1日合計5時間25分の取り調べがおこなわれておりますが、前日の25日に通院治療をさせ、何ら異常のないことを確認している上、当日の取り調べ時間も原告の体調に十分配意しつつ、午前中1時間50分、午後1時間55分、夕刻1時間40分と、それぞれ比較的短時間の取り調べ時間に制限をしておりまして、合計して5時間25分の取り調べ時間が直ちに違法な取り調べと評価されるものではないと判断をいたしております。
それと、実は本件の原告の所属しております極左暴力集団の革命的労働者協会、いわゆる革労協主流派でありますけれども、これについても少し説明をさせていただきたいと思いますが、極左暴力集団は社会主義とか共産主義革命をめざして、日本の民主主義体制を暴力によって転覆することを主張しておりまして、時限式発火装置とか爆弾等を使用するなどして、過激な闘争を今でもおこなっております。対立する諸団体や個人に対し、住居侵入、窃盗などの違法行為を組織的に引き起こしている集団であります。
革労協は正式名称を革命的労働者協会といいまして、結成は44年でありますけれども、その後、分かれたりしましたが、それで、平成11年5月に──それで、知っていただきたいのは、まず彼らを調べるときには、調べの時間とか、彼らはともかく逃走を図ること、それから、病院で彼らには自由に面接を極左の連中が来てやっているんですね。それが事実なんです。そして、彼らは何かあれば逃げることを考える。というのは、今現在、逃げているわけですから。
そういうことを前提とした上で判断をしてもらわなければ、木を見て森を見ていないようなものです、それは判断を大きく間違えるので。要するに、前提になっている彼らはどういう集団で──といいますのは、内ゲバはご存じかも知れませんけれども、彼ら革労協は主流派と反主流派がお互いにやっていて、ここ平成11年以降、14件やっていまして8人死んでいるんです。8人死んでいるんです。その死んでいるのを放置しておくわけにはいかないわけです。凶器準備集合罪としてはっきりした犯罪があれば、これの取り調べをするのは当たり前の話なんです。それをやってはいけないと言われると非常に心外でありますし、そして、十分医者の判断を聞きながらやっております。そこははっきり理解をしていただきたいというふうに思っております。
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再質疑
かわの県議
再質疑をさせていただきます。
第1に、先ほどの答弁の中で、「体力の消耗をしない限り、3時間から44時間は可能だ」と中川医師は言ったと述べています。中川医師がこの証言をしたかどうかが裁判でも問われました。しかし、この警察の主張が根拠のあるのか、疑問だと言わなければなりませんし、裁判において立証されたとはいえません。4月21日に県警が原告を逮捕する際に、中川医師は、事前に逮捕の件を知らされていなかったために、病院の応接室で30分から1時間にわたって高橋警部補他1名の警察官に原告の病状を話しています。この中で中川医師は、原告の病状から「1時間程度の取り調べが限度」と医師の判断を述べています。この際、警察官の1人は、説明をメモしたとされています。県警が、中川医師が「体力の消耗しない限り、3時間から4時間は可能だ」と述べているなら、このメモに書き込まれているはずであり証拠として裁判所に提出できたはずです。ところが、そのメモはないとしています。それだけではなく、高橋警部補と一緒に中川医師に事情を聞きに行った警察官が誰だかわからないと言うことです。だから裁判記録には、高橋警部補他一名と書かれているのです。これは驚くべきことであり、本来あってはならないことです。これでは県警がまともな捜査などできないではありませんか。
また、裁判所で中川医師とのやりとりを証言したのが、中川医師と直接話をした高橋警部補ではなく上司の遠藤警部だったと言うことも極めて不可解です。「今後の捜査に支障をきたすため」とのことですが、直接、話を聞いた高橋警部補が証言するのが、信憑性をもたれるのではないでしょうか。
ところで知事に伺います。知事は、裁判所における県警の対応が、先ほどふれた状況であったと言うことをご存じでしょうか。伺います。また、ご存じでしたら知事の感想をお聞かせ下さい。
第2に、県警は、中川医師が「体力の消耗しない限り、3時間から4時間の取り調べは可能」と述べたと主張しています。しかし、主張を認めたとしても、4月26日には、3回5時間25分と4時間を超えて取り調べを行ない、また、4月25日は、2回3時間48分の取り調べの後、夜、取り調べをしようとして原告から拒否され断念しています。この取り調べは、4時間を超える時間となって、自ら正当だと主張している取り調べ時間を超えていると考えるが、知事の見解を伺います。
また、4月23日には、原告を1日がかりで、勾留手続きの後、深夜の取り調べをしょうとして原告から拒否されました。こうした取り調べ、さらに長時間による取り調べは、被疑者の身体状況等を考慮して、被疑者の生命・身体に対して、不相当な負担や苦痛を与えないように措置することの法的責任を負っている警察官の職務を逸脱していると考えますが、知事の見解を伺います。
最後に、裁判長は、中川医師全体の証言は、従来、許可していた面会時間1時間と対照して、同等程度の1時間の取り調べが限度と理解すべきである。中川医師と高橋警部補らの話の中で、1時間を超えてもやむを得ないというようなニュアンスの発言があった可能性も否定ではないが、当時の原告の身体状況と中川医師の証言全体と説明の真意は、1時間が限度とするもので、「3時間から4時間の取り調べは可能とした」警察の証言を採用することができないとしています。警察の証言は、伝聞によるもので、この裁判長の判断は妥当だと考えますけれども、改めて見解を伺います。
松沢知事
私は警察の主張は適切であると考えております。詳しくは警察本部長の方から答弁させます。
末綱県警本部長
まず、今回の証拠の問題でありますけれども、伝聞証拠であるとか、そういう話がありました。確かに中川医師──今回、公判廷に出たのは遠藤警部が出ております。彼は捜査全般を主宰していますので、すべてについて承知をしている人間が公判に出ております。ただ、高橋警部補が聞いているのは事実でありまして、そしてその捜査報告書もあります。ただ、今回、ここで負けるとは思っていないので、捜査報告書を出していないんです。ですから、ぜひこれは出していただいて、控訴審でやっていただければ、多分はっきりする話だと思っております。
ですから、先ほどいいましたこと、すべてそうなんですけれども、まだうちが出していない資料はたくさんあるんです。それをもとにして検討をして──メモについてももちろん確認をしております。それは控訴審ではっきりする話であります。ただ、捜査報告書をつくれば、通常はメモはあくまで捜査報告書をつくるためのメモでありますから、残らない可能性はあるんですが、そこはよく……
そういう意味で、今回の件については、私どもは全く何ら負けるところはないと思っておりますので、堂々と控訴をしたいと思っていますので、よろしくお願いをいたします。
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